本書は、志賀直哉の短編小説が多数、収められています。その中のタイトルにもなっている「清兵衛と瓢箪」の最も気になった部分にふれたいと思います。
12歳の少年清兵衛は、瓢箪の魅力に心を奪われ、その収集に熱中します。しかし一方で、父親や教師ら大人たちは、清兵衛の気持ちや行動に寄り添ったり、理解しようとはしませんでした。例えば、興味感心事に熱中する子供と、興味関心事を取り上げる親との間に確執が生まれるという感じでしょうか。では、なぜ大人と子供との間にギクシャクしたものが生まれるのでしょう。大人に子供とはこうあるべきという固定観念があるからでしょうか。それとも、親が世間の目を気にし過ぎているからでしょうか。いろいろありそうです…
この作品の子(清兵衛)、親(父)、または教師の思いをそれぞれの立場からみると、見えてくるものがあるように思います。決めつけや事象の背景への無理解が、気持ちの中に内在していることを気づかせてくれます。
(司書 古川 郁)