「まこと」を写し撮る
カメラマンの渡部さんと言えば、一時期、テレビのバラエティー番組によく出演されていた方です。物腰の柔らかい独特の話し方で、共演者におもしろおかしくイジられていたのを覚えています。
でも、渡部さんの本職は「戦場」カメラマン。
この本では、バラエティー番組で見せていた面白キャラは姿を消し、代わりに戦場カメラマンとしての真摯な言葉が並んでいます。
なぜ撮りに行くのか。それは現地政府機関にとって都合の良い情報ではなく、その地で生きる人々の真の言葉を伝えるため。
悲惨な場面をどうして撮れるのか。それは当事者から「撮ってくれ」「撮って自分たちの代わりにこれを世界に広めてくれ」と頼まれるから。
これらが、戦場に身を置いた人間ならではの迫力ある文章で書かれています。
そのうえで、第二次世界大戦後、一度も戦争に巻き込まれていない日本に住む私たちに、戦争とはなにか、平和とはなにか、を問うています。
日本の周辺地域の世情が騒がしくなっている今、戦争とは何かを考えるためにも一読をお勧めします。
(司書 中島)