究極に不器用な二人の恋愛模様を描いた物語。
キラキラした人生を歩むことは、何年経っても決してあり得ないのだろうと思わせる主人公の男女二人。平凡すぎるほど平凡で、ここまで平凡で不器用な人っている?と思ってしまうほどのレベルであることがクセになって、どんどん読み進めてしまいました。
大都会でひっそりと、脚光を浴びることもなく、大きな幸福もなく生きている人…でも実はこういう人がほとんどなのが現実社会。市井の人が懸命に下手な生き方をしている姿を丁寧に書いているところが、不思議と共感を持てる作品です。小説を読むと「しょせん小説の中だけの話」と思ってしまう人に薦めたい小説です。
2015年の芥川賞受賞作家です、又吉直樹。でもこの作品は芥川賞作家にありがちな「時系列が複雑で読みにくい」「表現が凝りすぎて、よくわからない」「浮世離れしていて内容が入ってこない」などということは一切ない作品なので、日ごろ本を読まない人でも大丈夫ですよ。
(司書 山中)