就活で失敗続きの大学生、「すみません」が口癖のシングルマザー、原発の下請け会社を辞めた男…辛くても、世間から邪険にされても、生きていかねばならない。そんな状況の人たちの弱った心に、科学の普遍的な知識が光をもたらす物語。短編集です。
著者は元理系の研究者。風船爆弾と高度1万メートルの場所にふき続ける風の話や、目には見えない磁場を頼りに飛び続けるハト、精緻で完璧な美しさをもつ珪藻、といった科学の知識を物語に巧みに絡ませて、人知の及ばぬものへ思いを馳せることから人々が癒されていく様子を描いています。
温かい物語を楽しみながら、ちょっとした科学の豆知識も知ることができる、一石二鳥の作品です。
(司書 山中)