小説のような、文章を書くための指南書のような、哲学書のような、不思議な本です。
海の中で生きているタコジローは学校で友達にいじめられていると感じ、登校できないことがあります。学校をさぼって公園に行ってしまったある日、そこでヤドカリのおじさんと出会います。日記を書くことをすすめられ、書き方を教えてもらううちに、友達との接し方も変わっていきます。書くことで、自分との向き合い方を学び、自分の気持ちを言葉にする方法を身につけていくのです。
本文はまるでとても読みやすいファンタジー小説。携帯のことを[シェル(貝殻)フォン」と表現し、[吾輩はウニである。名前はまだない…」と人間界のお馴染みの小説のパロディが出てくるなど、ウィットに富んだ表現もたくさん出てきます。
書くことで思考が整理され、行動も変わっていく様子が、タコジローとヤドカリのおじさんのやり取りを通じてよく理解できます。また、タコジローに指導する、という体で書く方法も一歩ずつ教えてくれているので、書くことが難しいと感じる人にとっても、読みながら「よし、自分にもできるかもしれない、書いてみよう」と思える本です。
著者は『嫌われる勇気』が様々な言語で翻訳されて世界中で大ベストセラーになった、古賀史健氏です。
ベストセラーの著者が、とても読みやすい言葉、おそらく10代前半の世代を意識して書いたと思われる著作です。
(司書 山中)