一級建築士の青瀬の代表作品は、雑誌にも掲載された斬新な家。施主に喜ばれて建てたはずの家には、誰も住んでおらず、引っ越しをした形跡もなかった。その謎を追う話を軸に進むミステリー。
登場人物の幼少期や家族の物語、家をめぐる人々の思いなど、誰もが思い当たるような心の情景を絡めて、謎は解き明かされていきます。ミステリーとしてもハラハラドキドキでとても秀逸、そこに人々の心の描写も入り込み、悲しい事件も起こります。でも、読後は希望という名の何かを心に残す、そういう物語です。
『半落ち』『64』など、時代を映すミステリーの旗手の作品、読み終えたときは思わず「さすが!」と叫んでしまいました。
(司書:山中)