芥川賞受賞作です。
「逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。」
『推し』ているものがある人にはとても良くわかる言葉ではないでしょうか?
この言葉を新聞の書評でみかけ、心惹かれて読んだ本です。
『オタク』というネガティブな響きをもつ言葉で片付けられがちな「推す」という行為。対象が異性の人、ばかりではなく、同性だったり時には物だったり、様々なものを推している人がいると思いますが、推すということは、対象を理解しようとする、わかろうとする行為だということがこの物語から感じられます。「何かを応援する」ということが、生きる寄る辺となる、それは、オタクと呼ばれる人だけではなく、誰にでもある人間の性なのかもしれないですね。
主人公はアイドルを推す女子高校生。推しがすべて、という女子高生の生き方を、ドギツい表現も交えつつ、壮絶なタッチで描いた作品です。アイドル推しという言葉から連想する、キラキラちゃらちゃらした雰囲気を、これでもかというくらい排除した文体が新鮮です。推すという行為をこう表現するか、と衝撃を受けました。
21歳で本作が2作目という、若い作家さんの芥川賞受賞にびっくり仰天。図書館に入っています。今、書店では品薄です。いち早く読んでみてください!
(司書:山中)