6つの短編が収められている、ちょっとだけ“大人の世界”を覗いたような感覚になる一冊かもしれない。
これらの短編に共通するのは、「運命」と「宿命」というものに縛られ、背負い生きている人が登場すること。例えば、幼少の頃、殺人未遂事件の現場に遭遇し壮絶な体験をする。
のちに犯人は偶然事故死してしまうのだが、自分が犯人を呪い殺してしまったからだ、と自責の念に苛まれ、誰にも言えないまま大人になった女性など・・。
そんな人たちも、いずれは長い年月を経た後に出会う人から得る「癒し」によって、背負い続けたものから解放されていく。この出会いも実は「運命」なのか・・。解放されていく姿に、正直ホッとする。読後モヤモヤしたものはなく、むしろ勇気づけられる感じだ。
様々な境遇から抱えるものの種類も大きさもそれぞれ違うけれど、「明けない夜はない」という名言が頭に浮かんだ。
(司書:古川)