三重県の進学校に、1匹の捨て犬が迷い込んだ。学校で飼われることになったこの犬が見つめた、ある高校の12年間の物語。
物語のはじまりは昭和63年。そこから、卒業生が巣立ち新しい新入生が入って来て…を繰り返すたびにその生徒たちの物語が始まり、連作となっています。
勉強なんてできても仕方がない、東京の大学なんてもってのほか、と家に縛り付けようとする家族との葛藤。
阪神大震災で被災した祖母を引き取るものの、遠慮と孤独で決して幸せそうではない祖母と家族の間で悩む少女。
真逆のタイプだと思っていた同級生と同じ趣味を通じて心を通わせる少年。
援助交際に走る少女の抱える葛藤。
当時の社会を絡めながらの物語ですが、現代を生きる同世代の人たちの15歳から18歳の物語でもある、鮮やかな心の描写が、きっと今の君たちにも響くことだと思います。
途中、
「少年は大人になるにつれ、たくましさが増していく。過ごした日々が充実していれば、そのたくましさには自信が備わり、年をかさねるごとに魅力が増していく。」
という言葉があります。これ、そのまま君たちに投げかけます。
(司書 山中)