「地球に国境線は描かれていない」とは言うけれど。
日本は、島国のため、国境に対して、「海を越えた向こうは他国」という程度の認識しかない人が多いでしょう。しかし、陸続きで他国と接している国々は違います。国境の「こちら側」は自分の国、「あちら側」は違う国、と明確に分けており、国境線をまたいだ「こちら側」と「あちら側」で適用される法律が全く異なっていたりします。そして、その国境線は、一朝一夕で引かれたものではなく、歴史を背景とした妥協の産物であるため、時に「なんでこんな国境になっているだろう?」と疑問を持つような奇妙な国境ができてしまうことがあります。この本は、そのような奇妙な国境を紹介した本です。
たとえば、ベルギー国境近くのオランダの町、バールレ。この街には、町内にベルギーの飛び地が20近くもあり、そのベルギーの飛び地内にさらにオランダの飛び地が10ほどもあるという入り組んだ状態。国境が貫いているレストランもあり、オランダで決められた閉店時間を過ぎると、店内でベルギー側に移動し、営業を続けるそうです。
他にも、おなじ群島に属し、たった4kmしか離れていないのに、時差が21時間もある2つの島があったりします。2つの島の間には、国境と同時に日付変更線も引かれているからこそ起きる現象です。
地学的には同じ群島に属しながら、2つの島の間に引かれている国境。どことどこの国の国境なのか。ぜひ、本書を読んで確かめてみてください。
(司書 中島)