1700年代の終わりにテレグラフが発明され、1800年代イギリスのヴィクトリア朝時代には、モースル信号が発明されて新しい通信の時代がやってきた。新聞社や通信会社のスクープ合戦、電信を通じた詐欺、オンライン恋愛、ハッキング…今と同じで驚く。
この発明により、それまで船で書簡を運ぶか伝書鳩に頼るしかなく膨大な時間を要していた情報の伝達が即時可能になったことで、新聞の役割も大きく変わった。
クリミア戦争は、情報が飛び交うという意味で、戦争の形を大きく変えたものだった。
SNSが大きな力をもつようになった現代と同じだ。
英仏がロシアに宣戦布告してクリミアへ軍を送った当初は、軍は積極的にその規模や活動の情報を新聞社「タイムズ」に報告していた。読者への情報提供が、戦争への意欲を掻き立てると考えたからだ。
しかしそれらの情報はタイムズからロシアへ渡ることとなり、英軍の総司令官は「敵の情報は我々のスパイが手を尽くして得てくるのに、敵は5ペンスの新聞ですべてを手に入れる」と嘆いたとの話もある。
一方、電信は平和をもたらすと信じる者も多かったようだ。「外国の人と親近感をもって繋がることで、戦争はなくなるだろう」と当時の英国の通信専門家は書いている。
コンピューターもなかった時代に、インターネットとまるで同じような情報合戦があった事実が興味深い。情報時代の起源を垣間見ることができる。
(司書 山中)