サバクトビバッタの生態を研究するためにアフリカのモーリタニアへ旅立った筆者。サバクトビバッタは数年に一度アフリカで大発生し、農作物に甚大な被害を与えます。それは、食料危機を引き起こすレベルです。
バッタの研究でアフリカを救いたいという気概が認められ、現地の研究所から『ウルド』という高貴なミドルネームを与えられて研究活動をした記録が綴られています。
ただ、この本の面白いところは、バッタ研究の成果を披露する内容だけではなく、モーリタニア人の日常や考え方、食べ物や風景の描写も軽快な文章で綴られ、旅行記の側面も持ち合わせているところです。そのうえ、研究者の立場や日常、日本で科学研究を続けていく上での困難な状況も、興味深いエピソードやユーモアを交えながら語られています。
日本で食べられているタコは実はモーリタニアからの輸入に頼っています。モーリタニアが地図上でどこにあるのかも知らない人が多いのではないでしょうか。そんな国で日本の研究者が活動した記録、面白いですよ。
2018年新書大賞受賞作です。
(司書 山中)