著者は、京大の総長であり、霊長類学・人類学者です。特に、アフリカの現地で自らゴリラの社会に溶け込み参与観察をし、その生態を研究したこの分野での第一人者です。
ところで、皆さんは、サルとゴリラの行動は似ていると思いますか。山極先生によれば、両者は全く違うらしいのです。ボスザルという言葉を耳にするように、サルの社会ではボスが存在し、サルは仲間と食べ物を分け合い、仲良く向かい合って食べるということはしません。競争社会なのです。一方、ゴリラの社会は、群れの仲間の顔を見つめ合い、しぐさや表情で感情の動きを読み取りながら暮らすのだそうです。そんなゴリラの社会から見た現代人への警告とは何でしょう・・
どうやら現代の人間は、勝ち負けばかりを気にし、自分にとって都合のいい仲間ばかりを求め、閉鎖的な個人主義を作ろうとしている。つまり、互いの顔を見て、感情を読み取る感覚が薄れてしまい、信頼関係を築くことを忘れているのではないかとの警告のようです。
さて、日頃の自分の行動や感覚はどうでしょうか。振り返るきっかけになる一冊です。
(司書:古川 郁)